古本屋

新しい古本屋を発見した。入口が狭くて奥まったところにあり、いかにも入りにくい感じの店だったけど、勇気を出して入ったら奥に長細い店構えで、思いのほか明るくてひろかった。長い店の一番奥にちょっと怖そうなおじいさんがどっしりと構えていたからこそこそと入り口から探索を始めた。最近は伊藤整耕治人小島信夫を重点的に探しているんだけど、伊藤整小島信夫は結構あるんだけど、持ってたり、図書館で借りられたりするやつばかりで、それにちょいと値段が高めだったのでスルー。それにしても並び方が複雑で本当に宝探ししている気持ちだったんだけど、結局耕治人は見つけられなくて、そろそろ失礼しようかと思っていたら、その怖そうなおじいさんが話しかけてきた。見た目というか雰囲気がとても怖そうなそのおじいさんは、しゃべると温和そのものといった感じで、「なにをさがしてるの」と言った。耕治人の本と言うと、「あるよ」と言って書棚に案内してくれた。そこはまさにさっき探していたところで、完全に見逃していたということで、自分の注意力のなさにすごく悲しくなった。「全集もあるよ」とかいって、21000円の7巻組みの凄いのを指差して、「これなら全部そろうよ」とセールスしてきたのがとても可愛らしかったけど、お金ない問題と、持って帰れん問題がきわめて深刻だったので愛想笑いでごまかしておいた。そのあと店主が質問してくるままにいろいろと話をして結構仲良くなっってしまった(ように思う)。「うちはしばらくは続けると思うからよかったら他の本も買ってください」と最後に言ったのが、なんとも悲しいというか寂しいというか、きっと買いますと心のうちで強く思ったのでした。

ということで今日の収穫は、耕治人の「天井から降る哀しい音」。講談社文芸文庫版が欲しかったんだけどなくて、箱つきの単行本を買いました。