「灰色のダイエットコカコーラ」佐藤友哉

灰色のダイエットコカコーラ

灰色のダイエットコカコーラ

いまやゆやたん(ファンの間での佐藤友哉の愛称)がロストジェネレーションを代表する作家になってしまった… 

 佐藤友哉の作品はどれも、面白いと自信を持っていえるものではないし、小説を読むときの基準を「ストーリー」「物語」と言ったものに求めるなら、新しい作品になるほどつまらないものになっていると言い切っても問題ないと思う。
 じゃあ何で僕は佐藤友哉の小説を読み続けるのだろうか…
 佐藤友哉は面白くなくても(いや面白くなくはないのだが…)、それを取り囲むさまざまな言説が面白いというのがひとつ。新潮6月号の佐々木敦さん(やっぱりラジオで聞いていると親近感がわいて「さん」を付けずにはいられない…)のプチ佐藤友哉(実際は×印で打ち消してある)とか、同7月号の三島賞の選評とか、高橋源一郎との対談とか、仲俣暁生さんのブログの記事とか。これらは40代やそれ以上の作家や批評家によるもの。佐藤友哉と同年代やもっと下の世代の読者の感想や批評なら、ネットで探せば無数に見つかると思う。
 もうひとつは、単純な話、これからいったいどういう作品を書いていくのか、気になる、ということだ。華々しくデビューしたはいいけどその後が続かないという人が沢山いる。僕は佐藤友哉もそのような作家で終わるのではないかと思っていたけれど、なんだかんだといいつつ、今に至るに書き続けている。圧倒的な筆力があるわけでもなく、奔放な想像力があるわけでもない。にもかかわらず凡百の「肉のカタマリ」でもない佐藤友哉が今後どうなるのか気になる、ということかもしれない。