「わが星」をDVDで見た

「わが星」は名古屋でも公演があったのに見なかった事を本当に悔やみます。そもそも柴幸男(作、演出)を知ったのも「ままごと」を知ったのも「わが星」の公演を知ったのも、「わが星」名古屋公演直前の公式ツイートをHEADZがリツイートしたものだったのだから、ある意味では仕方がなかったのです。

だから普通なら数多の演劇のひとつとして、スルーされるのが当たり前なのだけど、しばらく前に佐々木敦の「即興の解体/懐胎」を読んで以来、演劇のことが気になるようになっていた時期だったし、たまたまその日は平田オリザの本やDVDも買って気分が盛り上がってる時だったから、2000円を切る手ごろな値段だったこともあって迷わず「わが星」三鷹公演のDVDを購入したのでした。

わが星「OUR PLANET [DVD]

わが星「OUR PLANET [DVD]

繰り返すがもう少し演劇方面に向けるアンテナを高くしていればと見終わって(みてる間中ずっと)後悔していました。DVDに収まってる情報はこの演劇全体のおそらくほんのわずかなものだと思う。逆を言えばDVDだけでもものすごいエネルギーを感じることが出来る。おそらくこの演劇は何度でも見返せるものだと思うけど、一番初め、まったく知らない状態で見たこの一回のはじめから終わりまでに受けた考えや気持ちや、もっと言ってしまえば苦しみみたいなものは多分実際の公演だったらもっと違った形だったのではないかと容易に想像できてしまうからやっぱりまだ結構悔しい。

口ロロの名曲「00:00:00」を引き伸ばしたような曲が劇中ずっと一秒にひとつのリズムを刻みつける中、とある星(宇宙?)の生まれてから死ぬまでを東京の団地に住む一家になぞらえて演じる役者が星になったり人になったり、めまぐるしい。

この劇団のことも柴幸男と言う演出家のこともほとんど何も知らずに見たはじめのうちは、円い舞台をぐるぐるまわりながら音楽に合わせてダンスする役者に違和感というか距離感みたいなものを感じるのだけど、全編それで押し切られる演出にだんだん説得されて、というか口ロロの音楽がずっと止まずに鳴っていることも影響していると思うけど、だんだんそのリズムに合ってきて、最後のところで最初の部分を反復するようなところがあるのだけど、本当に高揚感と言うか浮遊感みたいなものが強く生まれていると思った。

舞台ならではのひとつなぎ感があってこその演出だと思ったけど、幕前や休憩のアナウンスまで舞台の一部として演出しているような周到さがあってこその感動だと思った。最後のシーンではボロボロ泣いてた。