「スクールアタック・シンドローム」舞城王太郎

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫)

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫)

 単行本「みんな元気。」から収録された「スクールアタック・シンドローム」「我が家のトトロ」と書き下ろしの「ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート」のみっつの短編を収録。再録された作品もほとんど忘れていて興味深く読めた。一番興味深かったのは「我が家のトトロ」で舞城のすべての作品の中でもトップクラスに好き。この話に出てくる小説家の台詞とかを読んでると明らかに保坂和志が自身の小説論の中で言っていることで、この話全体で、猫が重要な位置を占めていたり、こっそり「小島信夫」という名前が出てきたりと、保坂和志を強く感じる。
 書き下ろしの「ソマリア〜」も舞城の小説の特徴であるシミュレーション色が濃く現れた作品で、「売られた喧嘩はすべて買う」みたいな気概を感じる作品だけど、内容的には「友達」をめぐる小説で、舞城の友達観が、自然となるものではなくて、強い意思とともになるものであることが表れていて興味深いというか舞城らしいと感じたけど、それもシミュレーションのひとつの結果というだけなのかもしれない…とも思ってしまうけど現に表れている部分を信じたい。過ちがあるからそれを乗り越えやり直すという前向きなプロセスが作品全体から感じられる。