「猫に時間の流れる」保坂和志

猫に時間の流れる (中公文庫)

猫に時間の流れる (中公文庫)

保坂和志の作品には猫がやたらと登場する。一般的に動物などの生き物が小説や文学(多分絵画なんかでも同様だろう)に登場するときはなにかの象徴や比喩になっていたりすることが多いけど保坂の猫はどこまでも猫として描写されつくす。人間の心の投影を受けることもなく、はしゃぎまわったり、傷ついたりする。とにかく保坂和志の猫に向ける視線の透明さには毎度驚かされる。
ところでいつも歩いている道にあるブロック塀の上によく猫がいるのを発見したのはちょうどこの小説を読んでいるときで、今までもずっとそこにいたのか、最近現れるようになったのか分からないけど、それから三日に一回はおんなじ場所で寝そべるそいつを目撃するようになった。いない日にとてもガッカリしている自分に軽く驚いた。これまでは猫なんて興味ないどころか、嫌いだったのに…