「ゴッホの遺言」小林英樹

ゴッホの遺言―贋作に隠された自殺の真相

ゴッホの遺言―贋作に隠された自殺の真相

 画家である著者が敬愛するゴッホの長年真作とされてきたスケッチを贋作であると直感するところから、それを実証的に解明していく。
 同時に、晩年のテオ(弟)やヨー(テオの妻つまり義妹)との間で交わされた手紙を読み込んでいくことで、ゴッホっという人物に付きまといがちな暗いイメージを払拭しようとする。
 さらにその2つが絡み合って、ひとつの事実が浮かび上がってくる。
 基本的に著者の仮説なので、信じる信じないは読者しだいですが、推理小説を読んでいるみたいに次々といかにも贋作だと思える要素を突きつけられる。そのテンポが小気味よくて気持ちいい。
 ゴッホのスケッチを宇宙的な規模で解明しようとする著者の視点が面白くて印象深い。